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コペンハーゲン漂流記 その2 「留学生活ってどんなもんよ」

みなさん調子はどうですか?僕はぼちぼちです。楽しいこともしんどいこともいろいろあるといった感じでしょうか。いきなり余談になりますが、騎馬戦おつかれさまでした。北欧の地から固唾を飲んで見守っておりました。

 さて、今回はデンマークでの留学生活、特に学校関係を紹介したいと思います。僕が通っているのはその名も「コペンハーゲン大学」です。そのまんまですね。「東京大学」みたいなもんです。まあ、こっちでは日本ほど学歴社会ではないらしいので「すごーい!」とは言われませんが…。まず授業について。デンマーク、というよりヨーロッパ全体の特徴なのですがあまり沢山授業を取る必要はありません。僕は週三コマです。多くて四コマ、少ない人で二コマです。なので週休6日なんて人も普通にいます。授業時間は2時間なのですが、なぜか必ず十五分遅れで始まり、途中で十分くらい休憩が入るので結局九十分授業です。「なんだよ!楽じゃん!」となりますが、課題はすごく多いです。読んでこなければならない文献の量は各授業百ページくらいでもちろん英語なので、慣れてない人には結構きついです。まあでも大抵は読んでなくてもなんとかなるので遊ぼうと思えば死ぬほど遊べます。

 授業の形式は、コペンハーゲン大学では意外に座学が多いです。あんまり日本と変わりません。もちろん、日本に比べてプレゼンやディスカッションは多いですが、うちの大学はヨーロッパでも保守的な大学のようです。海外の大学言われて思い浮かべるのは、我先に手を上げて意見を発表し、ディスカッションでは相手を潰しにかかる獰猛な外国人学生だったのですが、そんなことはありませんでした。日本より自発的に発表する人が多いのは確かですが、先生が意見を求めても誰も手を挙げなかったり、プレゼンするときに「私、前にでたくないから誰かやってよ」という感じの人は人種に関係なく沢山います。

 コペンハーゲン大学の一つの特徴が、人文学部が充実していることです。大学の中で最も新しくて大きいキャンパスはHumanities, つまり人文学部です。哲学や歴史なんかをやるところが一番優遇されるなんて日本では考えられないですよね。東大文学部の建物の汚さ・小ささたるや…。

 コペンハーゲン大学の学生はというと、留学生が結構多いです。というかどこの国でも同じだと思うのですが、留学生が現地の学生(つまりデンマーク人)と関わるのは結構難しいのです。デンマーク人はわざわざ英語の授業を取らないですし、寮も留学生が中心だからです。そんななかで現地人と触れ合う貴重な機会が、日本語を学ぶデンマーク人との集まりです。デンマークという小さな国にも日本語とかいう変な言語を学ぶ物好きがそれなりにいます。コペンハーゲン大学には日本語学科すらあります。各人の日本語レベルは様々ですがペラペラの人もいます。なかには「僕はデンマークが大嫌いだ!日本にいると本当に心が落ち着くんだ。」と豪語する人もおります。彼の趣味は日本のお笑いをYouTubeで見ることで、好きな芸人はダウンタウンと平成ノブシコブシだそうです…。

 交友関係を広げる最もポピュラーな手段が「パーティー」です。「パーティ」と聞くとみんなドレスアップしておしゃれで高慢な感じを想像しますが、要するに「飲み会」です。誰かの家でゆっくり酒飲んで話すだけです。特にデンマークは外で飲食すると高くつくので誰かの家や寮の共有スペースでやることが多いです。なので留学に行っている友達が「パーティーいってきた」とフェイスブックで高らかに報告していても「ああ、飲み会やったのね」と思ってあげてください。日本でいう飲み会ゲームみたいなのもあります。どこも同じです。とりあえず女の子にエッチなことを言わせたり飲ませたりします。同じです。

 宅飲みの話がでたので留学生の住宅事情についてお話しします。留学生には基本的に寮の枠が確保されているので、大学を通じて家を確保します。家のタイプは様々で、シングルルームやシェアルームがあります。僕が住んでいるのは、両者の中間のような形態で、それぞれ個室を持ちつつリビング・キッチン・トイレを4人でシェアする場所です。自分が住んでいるからというのもありますが、プライバシーも守られ、かつ他の人と交流できるので一番オススメのタイプです。どんな人が同居人になるかは完全に運なので、不幸にもパーティーピーポーと同じになると毎週自分のリビングで深夜までどんちゃんさわぎされる場合もありますが…。

 大学生の特徴は、国と地域によって様々です。ヨーロッパは先ほど書いた通り授業数が少なく、比較的のんびりしています。デンマークはさらに、授業の成績評価がない(合格か不合格だけ)場合が多く、みんな頑張らないそうです。なので、留学生は旅行しまくります。ヨーロッパの最大の利点は気軽に旅行できることです。1年間留学するうちにEU加盟国を全部めぐる勢いで旅行します。というわけで、今号から僕の旅行記も連載していこうと思います。

なすのヨーロッパ見聞録 その一 南ドイツ編

 九月末〜十月頭にかけてドイツに行ってきました。最大の目的は、世界最大級の祭り「オクトーバーフェスト」です。オクトーバーフェストはドイツ南部の大都市ミュンヘンで年に一回開催される収穫祭で、要はビールを飲みまくる祭りです。二週間の会期中、六百万人が訪れます。会場には移動式の遊園地が設置され、テーマパークのようになっています。ビール会社ごとに巨大なテントが設置され、その中でビールを飲みまくります。ビールは最低一リットルから注文できます。いいですか、「最高」じゃないですよ。「最低」一リットルです。

 梅本くんとミュンヘンで合流する予定だったのですが、彼は前日に騎馬戦で落馬し、(彼女と一緒に)救急車で運ばれてしまいます。しかし、奇跡の気合でなんとか合流を果たしました。ミュンヘンで僕らを待っていたのは、乾寮史上、最高に頭のネジが外れた留学生「ピルミン・ヴォレンザック」です。彼は、ミュンヘン在住でないにもかかわらず駆けつけてくれました。なぜかオーランドブルームそっくりの超絶イケメンへと成長を遂げた彼と共にミュンヘン市内を散策し、オクトーバーフェストへと向かいました。

初日、僕と梅本くんは早速三リットル近くビールをのんで酔っ払った挙句、ピルミンの友達の家に運ばれました。二日目、けっこう二日酔いと疲労が残っている中でもピルミンは僕らにガンガンビールを飲ませてきます。オクトーバーフェストの会場では食事を楽しむこともでき、典型的なドイツ料理を食べました。ドイツ料理は基本的には巨大な肉ですお売りと違って美味しかった…。夜からピルミンとピルミンの兄ちゃんおよびその連れと合流し、飲めや歌えやの大騒ぎに参加しました。ピルミンブラザーズの早飲み競争に近くのおっさんがブチ切れてセキュリティにテントを追い出されるまではすごく楽しい時間でした。全体ラインにも投下しましたが、上の写真の右がピルミンです。真ん中の人は現地でたまたま出会った日本人です。図々しいですね。

 3日目、クレジットが使えないことが判明しピンチに陥った梅本くんに五万円を貸したあと僕らは別々の目的地へと向かいました。僕は友達が留学しているドイツ中部の町マンハイムへと向かいました。本当に中規模のマイナーな町です。しかし、その周囲にはドイツで最も人気な観光地の一つハイデルベルクや宗教改革で重要な役割を担ったシュパイアー、ヴォルムスといった町があります。まずは、シュパイアー。この地で十六世紀に開かれた公会議でルター派に不利な判決が下され、キリスト教のプロテスタントが生まれたきっかけを作った町です。左の写真の下がその公会議が行われたシュパイアー大聖堂です。上の写真はガイドブックに載っていない聖堂なのですが、めちゃくちゃかっこいいです。プロテスタントが生まれなければ、今の世界は全く変わったものになっていたであろうことを考えると、本当に感慨深い場所です。次に向かったのは、ヴォルムスという町です。この町は、十二世紀に教皇と神聖ローマ皇帝による聖職者の任命権をめぐる争いに終止符が打たれた場所です(ググりました)。世界史を学んだ人はヴォルムス協約という言葉に聞き覚えがあるかもしれません。ここの大聖堂(写真上段)も本当に荘厳な場所です。ヨーロッパを旅行される際は是非、大聖堂と名のつく場所に行くことをお勧めします。なんとなくキリスト教を信じる気持ちがわかるような場所です。また、ヴォルムスの町には世界最古のユダヤ人墓地(写真中段)があります。最も古い墓は一千年前のものだそうです。ユダヤ人はヨーロッパ各所にユダヤ人街を作り、暮らしてきましたがその歴史は迫害の歴史でもあります。全てが迫害によって亡くなった人の墓というわけではありませんが、一千年前の死者からホロコーストの犠牲者まで様々な時代を生きた人々が眠る墓地は印象的な場所です。

 次に訪れたのはハイデルベルクという町です。この町は超がつく有名な観光地で、日本語もあちらこちらで聞こえます。有名なのが山の中腹にそびえるハイデルベルク城です。歴史的には大して重要な城ではないのですが、三十年戦争で崩れた廃墟感と周囲の景観の美しさに魅せられて多くの人が集まります。ちなみにこれを全部一日でまわりました。途中から微熱があったような気がしますが、そんなことは気にしません。

 最終日は再びミュンヘンを訪れました。向かったのはミュンヘン近郊のダッハウという町。この町には、ナチスドイツによって建設されたダッハウ強制収容所があります。実際の収容所はドイツの敗戦直前にドイツ軍により証拠隠滅のため破壊されたのですが、一部の建物が再現されています。その中にはガス室もあり、かなり陰鬱な気分になります。大都市ミュンヘンから電車でほんの三十分ほどの距離にあり、こんな場所で機械的な虐殺が行われていたという事実は重いです。

 そんな感じでドイツに行ってきました。来月はアイスランドに行ってきます。

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